最近見た映画の感想 ヴァイオレット・エヴァーガーデンなど

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

私がこの作品を知るきっかけとなったのは、すとぷり好きの娘です。なんでも、すとぷりのメンバーの誰かが、このアニメが好きだと公言していたそうで、娘も「映画に行きたい」と言い出し、この作品の存在を知りました。

私自身は当初、この作品にさほど興味が無かったのですが、京アニ制作の作品だということ、さらに佐久間宣行さんがラジオで「アニメシリーズを見てから映画に行くべし。号泣必須」とおススメしていたことで、俄然見たいと思うようになり、アニメシリーズをNetflixで事前に予習してから映画館に行きました。

まずはテレビシリーズの感想ですが、これは家族全員で鑑賞中、かなり泣きました。テレビシリーズ、映画を通じて、この作品のテーマは「愛」そして「一番身近な親しい人にこそ、伝えるべき思い・本音を素直に伝えられない」という人間の悲しい性です。「心で本当に思っていることと、実際に口にする言葉がおうおうにして違う」という事実は、多くの人にとっては、わざわざ口にするまでもない、当たり前のことなのですが、当たり前が何なのか、ということをそもそも知らないヴァイオレットという主人公に、この違いを提示させ、そして我々誰もが抱いているこの「伝えたいのに伝えられない」という悲しい葛藤を、ヴァイオレットが代筆という仕事で解決していくカタルシスは大変素晴らしかったです。若年層を中心に、文字離れが恐ろしい勢いで進んでいて、伝えたいこと・伝えるべきことを言葉で説明する能力かどんどん低下している今、特に若い世代に見て欲しい映画だと思います。また、この映画の特筆すべき点は、やはり京アニが世界に誇る作画の美しさで、どの場面も本当に素晴らしかったのですが、最後に花火があがるシーンは「この花火と花火に照らされる風景を描くのに、アニメータの皆さんは、どれだけの手間と時間を費やしたのだろう」と考えただけでかなり胸が熱くなりました。さらに補足ですが、劇中で使用されている音楽もとても良かったです。

(以下ネタバレなので見たくない方は画面を閉じて下さいね)

 

 

 

さて、この映画の終盤、死んだはずの少佐が実は生きていた、という展開なのですが、実は私、ちょっとだけ「違うラストのほうが良かったのでは」と思いました。クライマックスの展開として、死んだはずの人が生きていたという展開は、あまりにもベタで、あまりにも都合が良すぎるのではないか、と。

ただ、その後「鬼滅」の映画を見ていろいろと考えることがあり、結局は「少佐が生きていて最終的にヴァイオレットと一緒になり幸せになる」というラストで良かったのだと思うようになりました。人を死なせて、その人の死によって泣かせる物語を作るというのは、ハリウッドでも日本でも常套手段なのですが、やはり安直に人を死なせる物語はどうなのよ、と思ったわけです。大切な人を守るために死ぬとか、愛する人を助けて自分は死ぬとか、美談になりやすいですし感動もしやすいし、憧れもしますけど、やっぱり大前提として、生きてほしい。ヴァイオレットの中で半ば神格化されていた少佐という人間を生き永らえさせ、弱さを持つ人間としてしっかり見せ、なおかつ最後にハッピーエンドに導いた京アニはやはり凄いなあと思った次第です。

 37セカンズ

Netflix で鑑賞しました。車椅子の女性が主人公ですが、障害の有る無しに関わらず「若者が、親の庇護の元を飛び出して自分で世界を広げていく」という 普遍的なテーマを扱った作品です。私は親なので、どうしても親目線で作品を観てしまうのですが、やはり親(特に母親)というのは、子どもが幾つになっても常に出来る限りのサポートをしてあげたいと過干渉気味になりがちだし、子どもが一歩外に出れば事故や事件に遭わないかと心配してしまうのが性ってもので(子どもに障害があれば尚更ですが)、それがもとで子どもから疎まれ、距離を置かれてしまう、というのもまた、それが自然の流れのような気がします。とはいえ、近年、過保護の親に甘えたまま、ずるずると親の庇護の元、年をとってしまう「ぼっちゃんおじさん」「嬢ちゃんおばちゃん」が増えている中、なんだかんだいって、主人公のユマちゃんは、しっかりお母さんの過保護をふりきって自分で人生の舵取りを始めたわけで、そういう意味では、離婚してあらゆるものを犠牲にして苦労してユマちゃんを育ててきたお母さんは、結局のところ育児に成功したとも言えます。超過保護のお母さんを、単なる邪悪な悪者としてだけ描かなかった Hikari さんの判断には好感が持てました。あと特筆すべきは各キャストの演技。ユマちゃん役の佳山明さんは映画初出演ながらそれを感じさせない熱演でしたし、お母さん役の神野三鈴さん、長年の介護生活をしっかり感じさせる見事な演技、本当に素晴らしかったです。

 

映画 鬼滅の刃

子供が居る多くの家庭がそうであるように、我が家にも鬼滅の刃全巻がそろっており、アニメシリーズも既読です。そんなわけで当然のように映画にも行ってきました。感想はというと、やはり素直に感動したし、良かったなあと思います。もともとアニメシリーズの段階で、作画はかなりのクオリティだったのですが、映画はそのさらに上をいく美しさ緻密さで、物語の冒頭は、まるで写真のような背景と、二次元(ほぼ平面)のキャラクターに若干違和感を覚えましたが 、ストーリーが進むに連れて気にならなくなったように思います。煉獄さんがメインキャラクターということで、火・炎の描写が多様されているわけですが、以前、宮崎駿さんが何かのインタビューで「今の若いアニメーターは、火を全く見ずに育った人が多く、火を描くことができない」と言っていたことを思い出しました。恐らくアニメーターの皆さんはこの映画を作成するにあたり、火や炎の動きを相当研究したのではないかと思います。次のテレビシリーズも楽しみです。